アウトドアのお酒のお供は……。
日本食文化会議・魚部(佐藤容紹、小川貢一、うすいはなこ)
2022.3.25
キャンプに日本酒。これがなかなか良いものである。そして焚火にあたり、燗酒でのんびり、という時には缶詰が便利だ。今回ご紹介するのは加藤水産の「海鮮缶詰おつまみ」。湯煎で温めればそのまま酒肴になり、アレンジ次第で朝ご飯やボリュームおかずにもなる。
キャンプでは缶詰が便利
ここ数年のアウトドア人気に加え、新型コロナの影響で空前のアウトドアブームになっている。さらにキャンプ道具の進化、ソロキャンパーの増加で、今まではほとんどいなかった冬季にキャンプをする人も急増した。
キャンプでの一番の楽しみは、焚火と言っても過言ではない。火をおこし、焚火を見ているだけでも楽しいのだから、その焚火を利用した料理はとても楽しい。ソーセージを焼くのも、カレーを作るのも、自然環境と火があるだけで、家で作るよりもさらに美味しく感じる。
最近のキャンプ料理(アウトドアクッキング)では、大きな肉の塊を焼いたり、ダッチオーブンで料理をしたり、スモーカーを使って燻製を作ったりと、手の込んだ料理を作る人が増えてきた。
そんなキャンプだとビールやワインが主流な気がするが、実は日本酒もなかなか良いものである。まだ肌寒い夜は特に、身体を芯から温めてくれる燗酒は最高である。キャンプではお湯はすぐに作れるし、最近はキャンプ用の熱燗セットまであり、簡単に燗酒ができる。
そんな燗酒を楽しむために便利なのが缶詰である。そのまま食べても美味しいが、熱燗同様に湯煎して温めればより美味しくなるし、さらにうまく活用すれば、キャンプ料理のバリエーションを簡単に増やすことができる。
今回は加藤水産の「のどぐろアヒージョ」「金目鯛の煮こごり風」「かにみそバーニャカウダ」を使って、簡単アウトドアクッキングを紹介したい。
最初は「のどぐろアヒージョ」。三枚おろしになっている小ぶりののどぐろが、奇麗に骨も取られてオイル漬けになっているので、少し温めるだけで油の口当たりを抑えられ、酒肴として申し分ない。
そのアヒージョをひと工夫した、キャンプの朝ごはんに最適なホットサンドがこちら。
のどぐろアヒージョのホットサンド
材料
「のどぐろアヒージョ」70g 1缶
パン(食パンなら8枚切り、バゲットなら1cmにカットする) 適量
彩り野菜(細切りにしたスナックエンドウなど) 適量
溶けるチーズ 少々
作り方
ホットサンドメーカーにパンを並べ、のどぐろ、彩り野菜、チーズをのせる。食パンならもう一枚のパンをのせてサンドする。バゲットならオープンサンドがおすすめ。ホットサンドメーカーをひっくり返しながら焼く。
「金目鯛の煮こごり風」は、煮こごりを生かして、夏のお昼にぴったりの冷製料理を作ってみては?
金目鯛の煮こごりそうめん
材料(1人分)
「金目鯛の煮こごり風」70g 1缶
そうめん 1束
トマト(さいの目に切る) 1/2個分
オリーブオイル 少々
きざみ葱、こしょう 各少々
作り方
そうめんを茹でて冷水で洗い、水気をよくきって器に盛る。「金目鯛の煮こごり風」、トマト、オリーブオイルをさっと合わせてそうめんの上に乗せ、きざみ葱を散らし、こしょうをふる。
「かにみそバーニャカウダ」は、温めてゆで野菜につけてもよし、ご飯と合わせてガパオライス風にアレンジもできる。かにみそでガパオライスとはちょっと想像がつきにくいかもしれないが、お酒にも合い、ボリュームのある夜ご飯として楽しめる。
かにみそバーニャカウダのガパオライス風
材料(1人分)
「かにみそバーニャカウダ」70g 1缶
目玉焼き 1個
レタス(せん切り) 適量
溶けるチーズ 適量
温かいご飯 1人分
好みで一味唐辛子など 少々
作り方
ご飯に温めた「かにみそバーニャカウダ」、目玉焼きをのせ、レタスとチーズを添える。
加納水産にはその他にも「天使のほたて」「幸福のずわいがに」「煌めきのチーズいか」など、便利で美味しい缶詰が揃っているので、みなさんもオリジナルの楽しみ方を探してもらいたい。
キャンプの醍醐味、焚火のすすめ
最後にキャンプを楽しむにあたって、焚火などでの火の扱いのポイントを少し。
焚火台などでの薪を使った火おこしでは、「吹かない」「あおがない」が鉄則だ。火の管理は、「酸素」と「燃料(薪など)」と「熱量」のバランスを取ることである。小さくくすぶっている状態で吹くと「熱量」が下がり、火を消してしまう。また風量が熱量に見合わないと吹き消してしまう。
「火の無いところに煙は立たない」という言葉があるように、煙が立っている間は、木の中で火がくすぶっているので放っておけば熱量が上がり、ある温度まで達すると勝手に炎が上がる。多くの人がその手前で吹いたり、あおいだりして、火の力を逆に邪魔している。
また、炎が上がっている時に吹くと、さらに炎が強くなるが、その分の燃料(薪など)が消費される。なので長く焚火を楽しみたければ、吹いたりしないほうがよい。
一方、炭の場合は吹いたりあおいだりする必要がある。それは炭の周りをガラス質の灰が覆って、酸素が熱量と燃料に接するのを妨げているのを、灰を飛ばすことでその3つが一緒になり、炎が立ち上がるからだ。
この理屈がわかれば、火は簡単におこせる。火おこしをする時、たまにこの「酸素」「熱量」「燃料」の関係を楽しいでもらいたい。
上手に火をおこして焚火を囲み、缶詰を使った簡単で美味しいおつまみと日本酒で、今までとはちょっと違ったキャンプもぜひ楽しんで欲しい。
■缶詰セットの問合せ:北国からの贈り物
TEL. 050-5533-5678
support@kitaguni.tv
http://shop.kitaguni.tv/
佐藤容紹(さとう ひろつぐ)
地域創成プロデューサー。魚屋店主。長年一次産業に関わる傍ら、古来の日本食文化と伝統にある本質と原理原則を学ぶ機会に恵まれた。水産業・農業・伝統工芸品・キャンプなどさまざまな角度から地域に関わり、経済的、社会的な活性化をさせるための活動を行っている。
小川貢一(おがわ こういち)
築地魚河岸三代目、鮮魚販売方法・商品作りアドバイザー。もと仲卸ならではの豊富な知識と、素材を生かしたアイディア満載の料理に定評がある。魚のプロとして、企業や自治体主催の講演、さまざまなメディアに出演。著書に『築地魚河岸三代目 小川貢一の魚河岸クッキング』など多数。
うすいはなこ
料理人。日本料理、食文化講師。博物館設計の仕事を経て日本料理店で修業した後、独立。「H-table 料理教室」主宰。季節や行事食、食卓文化を伝えながら、地元江戸料理の研究、地域の特色ある魚食文化を残す活動をしている。著書『干物料理帖』は 2021年グルマン世界料理本大賞でグランプリ受賞。
今宵は、このお酒で。
小さなまちの大きな挑戦
南部美人 特別純米南部美人は、創業明治35年(1902年)、岩手県二戸市唯一の蔵だ。現社長の久慈浩介氏は五代目。多くの蔵元の跡取りを輩出する東京農業大学醸造科学科を卒業し、地元に戻り蔵の酒造りに関わってきた。また、海外進出にも積極的で、海外での日本酒のプロモーションにも長年取り組んできた。
「南部美人 特別純米」は、岩手県二戸市産の「ぎんおとめ」を使用。試験栽培の時代から、二戸市金田一の五日市亮一氏を筆頭とする農家のチームが育ててきた米で、この農家チームに全面的に協力してきたのが南部美人だ。試験醸造も南部美人の蔵で行い、その後、「ぎんおとめ」は岩手県のオリジナル酒造好適米に認定された。
地元で育つ「ぎんおとめ」と二戸・折爪馬仙峡の伏流水を用い、二戸の南部杜氏が二戸の酒蔵で醸したのが特別純米酒。南部美人の定番酒として、幅広い料理に合う究極の食中酒を目指して造られている。
この特別純米酒が、2017年、世界最大のワインコンペティションIWC(International Wine Challenge)のSake部門で、最高賞のチャンピオン酒に輝いた。人口約2万6000人の町が、「南部美人 特別純米」と共に世界に発信された。
IWCによるテイスティングコメントは以下の通り。
芳醇で、さわやか、アロマは中程度。上質の米のフレーバーは、いくつかのフローラルとマシュマロを含む。きめ細かなビロードのような質感。うま味は中程度の味わい。辛口で、やや重め、余韻は長い。
まだまだ小さな日本酒の海外市場開拓に、長年、久慈社長と汗を流してきた取引先や、国内外の南部美人ファンがこの吉報に大喜びしたのは言うまでもない。お問合せ
文・平出淑恵(酒サムライコーディネーター)
http://coopsachi.jp/
撮影・板野賢治