魅力いっぱいの岐阜枝豆を訪ねる

入江亮子(日本料理家)

2022.10.21

秋めいてきますと、暑かった今夏のことなどすっかり忘れてしまいますが、ビールのお供でお世話になった枝豆は、今でも現役でスーパーに並んでいます。別名“夏豆”ともいうくらい夏のイメージが強い枝豆ですが、意外と旬が長いんです。もちろん早生、晩生とその時期ごとに向く品種は変わってきます。岐阜市の枝豆は7月中旬がピークですが、早いものはGW前から出荷! 最終的には11月くらいまであるんですよ。

枝豆流通の現場にて

数え切れぬほど枝豆料理は作っていても、意外と育成現場を知らないのが料理家。他地域の枝豆畑は取材したことがありますが、60年の歴史ある岐阜枝豆を改めて勉強したく、市役所の尾崎さんのアテンドで、関係各所を岐阜在住の鳴海先生と巡りました。

まずは朝イチで曽我屋枝豆選果場へ。こちらは岐阜駅から7キロほど北西に行ったところにありまして、中は刈り入れた枝豆を枝から外す作業場と、袋詰め・箱詰め作業場に分かれています。お話はJAぎふの山田さんに伺いました。

収穫から箱詰めまでのスケジュールは、こんな感じ。早朝3〜4時に収穫、7時〜10時くらいまでにはこの選果場で枝豆と茎や葉に分けます。仕分けする機械は、枝豆ピッカーといって、根を上にして入れて脱莢する懸垂方式なので、割れや裂けが防げるとのこと。枝豆以外はファンによって機外へ排出されます。枝豆はコンベアで下のかごに落ちていきます。ピッカーは20年前ごろから導入しているとのことでした。

枝豆ピッカー
省力化にかかせない、枝豆ピッカー。

袋詰め・箱詰め作業場では、すごいスピードでどんどんサイズ別に仕分けられ、袋詰め後、箱詰めされていきます。機械だけでなく、目視でもしっかとチェックしていましたが、皆さんベテランぞろいで早い、早い。

枝豆の袋詰め
サイズ別に分けられ、次々に袋詰めされていく枝豆。

枝豆の箱詰め
箱詰めされ、出荷まで5℃の予冷庫に保管。

箱詰め後は、5℃の予冷庫で寝かせて翌朝の出荷を待ちます。6割が大阪市場へ、3割が地元、残りの1割が近隣他県となり、残念ながら関東ではいただくことができません。

鮮度保持流通の第一人者曰く
野菜は“アイスクリーム!”

以前メルマガでも書かせていただきましたが、枝豆は、大豆の発達途中のものなので、置いておけばどんどん成長していきます。
https://jfcf.or.jp/musubiplus/gifuvegetable12/
そのため鮮度が命。現在の流通における鮮度保持技術を教えていだだきたく、岐阜大学内にある岐阜県食品科学研究所の中野先生の研究室にお邪魔しました。

先生の研究はずばり「野菜の鮮度と保持」。先日も大阪市場に出向き、出荷後の枝豆から糖の減少データなどを取られてきたそうです。

かつては塩蔵などでの保存が主だったものが、塩分による健康への影響からコールドチェーン勧告が1969年に発令され、以降、予冷庫→冷蔵車→低温売場・低温貯蔵庫→冷蔵ショーケースという具合に、低温での物流が原則となっています。が、荷の出し入れ時などは屋外の場合が多く、なかなか理想通りにはいかないわけです。

そこで2003年に岐阜の産地で導入されたのが、MA包装。野菜の呼吸による酸素と二酸化炭素をうまく調整することによって、品質保持を狙った包装技術です。野菜が包まれている袋を見るとランダムに穴が空いていますよね。これ、適当じゃないんです。しっかりと考え尽くされての穴なのでした。

ガス環境を最適化することで、各段に進んだ野菜の鮮度保持。

岐阜県食品科学研究所
中野先生の実験室。様々な温度や湿度で品質保持の実験中。

技術はこのように進んでいきますが、やはり温度管理は重要なので「アイスクリームだと思って扱うように」と流通現場に指導しているとのことでした。イメージしやすいですよね。他にも、鮮度劣化の目安になるスタキオース(大豆オリゴ糖)の増加の話などもじっくり伺うことができ、大変勉強になりました。

枝豆畑は努力のたまもの

さて、最後に向かったのは、枝豆畑です。園芸振興会えだまめ部会の市川会長にご案内いただきました。市川会長は枝豆栽培にかかわってかれこれ半世紀。

枝豆畑
防虫ネットをはりめぐらせた市川会長の枝豆畑。

岐阜枝豆は、しっかりとブランド化されて主に関西の市場に出荷されていますが、自然とそうなったわけではなくて、消費者の皆様に買ってもらうために努力を積み重ねて、産地としての信用を築いたといいます。

一つはこの防虫ネット。害虫だけでなく、風雨からも守られ、品質がぐんと向上しました。また農作物は一般的に多湿になると発芽しにくくなるので、特に技術がいるところだそうです。

湿度といえば、大雨になると根腐れが起きやすく、その対策として根を高くする栽培方法を取っているとのことでした。またブランド化が成功したのは、生産者だけではなく、行政、流通などが一丸となり頑張ったおかげだと。

最後に生産者からみた一番おいしい食べ方は?と伺うと、やはり塩ゆでが、一番味がわかる気がするなぁとおっしゃっていました。

防虫ネットの枝豆畑
防虫ネットの枝豆畑をバックに市川会長(中央)と。

入江亮子(いりえ りょうこ)

懐石料理「温石会」主宰。四季をいかした懐石料理・江戸料理・郷土料理・精進料理・節句料理を教えるほか、茶懐石の出張、地域の特産品開発、メニュー開発などを行っている。日本酒利き酒師・日本酒学講師・酒匠として、日本酒と料理のマリアージュも数多く提案。カルチャースクールなどでの日本酒講座も多数。著書『八寸・強肴に困らない本』(世界文化社)は、2019年グルマン世界料理本大賞MATCHING FOOD&DRINK部門でグランプリ受賞。SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会)理事。https://onjakukai.com

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