ぎふベジ通信

フランスでも柿はkaki!?
〜岐阜・富有柿でサラダとデザートを〜

小川奈々(フランス料理家)

2022.3.20

柿というと、日本や中国をはじめとしたアジアで栽培されている果物、というイメージがありますが、実はフランスでも日本名の「kaki」という名前で流通しています。パリでも人気が出始め、フレンチとしての柿の可能性は無限大。今回は、フランスでも好まれる柿のサラダとデザートをご紹介します。

フランスでは完熟トロトロも人気

私がパリに住んでいた頃の2010年当時、柿は中華街などのアジア系スーパーまで行かないと見かけませんでした。中華街の柿というと、実がかたく、甘味の少ないものしかなかったように記憶しています。しっかりとした甘みを好むフランス人に人気があったとはいえず、柿の存在自体、知らないひとも多い時代でした。

十数年前まではあまり知られていなかった柿ですが、パリにいつ頃伝わったかというと、意外にも19世紀の終わり。100年以上前といわれています。

1867年にパリ万国博覧会が開催され、日本の芸術がヨーロッパに広まるきっかけとなったわけですが、その影響を受けて、1873年のジャポニズムと版画の流行とともに、柿はパリへと持ち込まれました。

その後、柿に適した気候のプロヴァンス地方で、すぐに栽培が成功し、現在は南フランス産の柿を食べることができます。

では、2022年の今は、どうでしょうか。
以前とは変わり、マルシェや街のスーパーでは、10月~12月頃の旬の時期に必ずといっていいほど柿が並んでいます。産地は、南フランス以外にもスペイン、イタリアなどのヨーロッパ産が主流です。

フランスのマルシェに並ぶ柿(左から2つめと3つめ)。どちらもスペイン産で、左がpersimon、右がclassique。

いずれも富有柿のようなタイプの甘柿です。形は丸っこいというよりも、すこし細長い感じでしょうか。特筆すべきは、かなり熟成の進んでいるものも多く売られていることです。というのも、皮に触れればすぐに崩れてしまうような、トロトロな完熟状態にしてスプーンですくう食べ方が人気だから。これがもう、たまらない甘さと旨味で、やみつきになります!

トロトロの完熟柿。

もちろん、ここまで完熟する手前で、お菓子やお料理に使われることがあります。柿は、旨味が十分あるものの、酸味があまりなく、主張するタイプの果実ではないため、活用する際には酸のあるものやスパイス、またはハーブを合わせることが多いです。

例えばお菓子なら、酸味のあるパッションフルーツと合わせたり、苦みのあるカカオやキャラメルソースと合わせることがあります。また、コンフィチュールにする際はヴァニラやアニスなどのスパイスをきかせます。

お料理なら、お魚と合わせて爽やかなカルパッチョや、生ハムと合わせるなど。

柿と野菜を生ハムで巻いて。

岐阜の富有柿で作るサラダとデザート

手軽に作れる柿を使ったサラダとデザートをご紹介します。使用する柿は、甘柿の代表、富有柿がおすすめ。上品な甘さ、しっかりとした旨味、さらに実が柔らかで果汁を多く含む富有柿は、スイーツやお料理への活用に非常に向いています。

富有柿で作りたい、柿とクレソンのサラダ。

柿とクレソンのサラダ

材料(4人分)

柿 1~2個
クレソン 1束
カッテージチーズ 50g
レモン汁 小さじ2
オリーブ油 大さじ2
塩・胡椒 各少々

作り方

1 柿は皮をむいて、7mm幅の短冊に切る。
2 クレソンは3㎝ぐらいの食べやすい大きさに切る。
3 ボウルに柿、カッテージチーズ、レモン汁、オリーブ油、塩・胡椒を入れてよく混ぜ合わせ、最後にクレソンを加えてさっと混ぜ、器に盛る。

柿のコンポートと生姜紅茶のパンナコッタ。

柿のコンポートと生姜紅茶のパンナコッタ

材料(4~5個分)

<パンナコッタ>
牛乳 300ml
生クリーム 100 ml
グラニュー糖 40g
生姜スライス 2枚
アールグレイ(ティーバック) 2個
粉ゼラチン 5g
ぬるま湯 大さじ2

<柿のコンポート>
柿 2個
グラニュー糖 30g
水 100 ml
生姜スライス 1枚
すだち 2個(またはライム1個)

作り方

1 パンナコッタを作る。粉ゼラチンとぬるま湯を合わせて、レンジに20秒かけて溶かす。
2 1以外のパンナコッタの材料を全て鍋に入れて火にかける。沸騰したら生姜とティーバックを鍋肌にぎゅっと押してから取り出し、火を消し、1を加えて混ぜる。ボウルにうつし、氷水にあてて冷ます。器に入れて、冷蔵庫で冷やし固める。
3 柿のコンポートを作る。柿は皮をむいて、ひと口大の乱切りにする。鍋に入れて、グラニュー糖、水、生姜スライスを加えて火にかける。沸いたら火を止めてそのまま冷やす。
4 2の上に3をのせる。すだち(またはライム)の皮のすりおろし、搾り汁をかけ、スライスを飾る。

富有柿の、新たな一面に気づかされるレシピです。ぜひお試しを!

小川奈々(おがわ なな)

2003年渡仏。ル・コルドン・ブルーパリ本校卒業、グランディプロム取得。同校アシスタントを経て、フランス外務省厨房、星付きレストランやビストロに勤務。パリ製菓学校ベル・エ・コンセイユ卒業。2010年帰国し、ビストロ料理教室を主宰。企業のメニュー開発など多方面で活躍中。著書『パリの有名レストランを巡って辿り着いた 私の星付きビストロレシピ』(誠文堂新光社)がグルマン世界料理本大賞で世界準グランプリ受賞。他に著書多数。西島秀俊主演、ドラマ「シェフは名探偵」料理監修を務める。
http://nana-ogawa.com/

「ぎふベジ」とは?

岐阜市近郊の5市3町(岐阜市・羽島市・山県市・瑞穂市・本巣市・岐南町・笠松町・北方町)で採れる、安全・安心にこだわり抜いた特産農産物の愛称です。
https://gifuvege.jp

ぎふベジ研究所にて、オンラインシンポジウムを開催しました

日本食文化会議ぎふベジ研究所では、枝豆、大根、柿、トマト、葱の各ラボを立ち上げ、メンバーたちが改めてそれぞれの野菜に向き合っています。この1月、2月にオンラインシンポジウムを開催。
柿ラボの様子は下記よりご覧いただけます。
https://www.youtube.com/channel/UC1VjMNG4-XiXGkEVqG57zmQ

撮影・小川奈々

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